フィンランドの苗字の数?
以前,「ゼロから話せるフィンランド語のページ」 に高校生の方から以下のような質問が送られてきました (コメントがついた記事はこちら):ヨーロッパでの苗字数5万のうち,フィンランドが3万もあるのはなぜ?
その後,時間がないこともあり,あまり深く調べることができずにいますが,はたしてこの話の出所はどこなのでしょうか?もしかして一般にもよく知られている話なのかもしれません。もし,ご存じの方がいらっしゃったら,ぜひ出典を教えてください。
とりあえず,質問には以下のように答えてみました ;-) (原文に少しだけ加筆訂正をしてあります。)
「ヨーロッパの苗字数が5万,フィンランド3万,という数の出典が分からないのですが,手元のフィンランド語の苗字辞典 (Mikkonen, Pirjo & Sirkka Paikkala (1992) Sukunimet. 『苗字辞典』 第2版. Helsinki: Otava) を見てみました。この本の見出し語数は5,060,綴りが異なる苗字の対応が分かるように作られている索引の総数は12,270でした (同書9ページ)。
戸籍として登録されている苗字の数になると,ぐっと増えます。些末なものが含まれるからで,戸籍登録されている苗字の数は少なくとも79,000ある,と上掲書にあります。(なお,上記書籍の索引にある12,000あまりの苗字でフィンランド語の苗字をもっている人の90%位を網羅できるということです。)
フィンランド語の苗字の数の多さの要因はいろいろあると思いますが,綴りがちょっとずつ違う名前があること,同じ語根からいろいろな語尾をくっつけて苗字が作られること,結婚で苗字をくっつけて新しい苗字を作る例があること,などが挙げられる,と思います。フィンランド人の苗字の記録は14世紀頃からあるらしいのですが,とびきり古いわけではありません。
たとえば,kallio「岩」が入っている苗字は:Kallio「『岩』さん」, Kallioinen「『岩乃』さん」, Kalliola「『岩場』さん」, Kalliojärvi「『岩湖』さん」, Kalliokoski「『岩滝』さん」, Kalliomaa「『岩地』さん」, Kalliomäki「『岩丘』さん」, Kallioniemi「『岩岬』さん」, Kallionpää「『岩頭』さん」, Kalliosaari「『岩島』さん」, Kalliosalo「『岩林』さん」と少なくとも11あり(このあたり,日本語の苗字とも似ているのではないかな,と思えます),さらに Kallio-Räisänen のように,他の苗字と組み合わせられてできている例を考えるともっと増えます。」
フィンランド語の苗字の数を上のどの見方で集計するか,ということ,また,同様にヨーロッパの他の国の苗字の数をどのような根拠でいくつと見積もるか,ということなど,単純に「ヨーロッパ5万のうち,フィンランドが3万」というだけでは厳密ではないことがわかります。この話,数が一人歩きしている,いわばフィンランドに関する「都市伝説」かも,とも思えます。どうなんでしょう...
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