安価な英語⇔フィンランド語辞書
以前報告した,ドイツの出版社 Langenscheidt の新しいフィン英-英フィン辞書 Universal Dictionary Finnish がやっと届きました。
フィンランドでも出されているポケット辞書ですが,この辞書はそれよりもさらに小さい縦11センチ弱,横8センチ弱で,ワイシャツのポケットに軽々収まる大きさです (写真 では大きさの比較用に USB メモリを置いてみました)。それにもかかわらず,文字は,例えば (読みにくいポケット辞書として有名な...) Rekiaro & Robinson の英フィン辞典 (Gummerus) よりも大きく,サイズの割に読みやすいように感じます。見出し語が青ゴシックで区別されているのも嬉しいところ。
というのも,この辞書は,記述をできる限り抑えて,基本的に見出し語と発音,訳だけにしているからです。用例はほとんど挙げられていません。従って,分からなければさらに調べる必要がありますので,この辞書があればOK,というわけにはいかないかもしれませんが,この値段で手軽に手に入る辞書が出たというのはよいニュースかと思います。
見出し語数は 16,000, これは英フィン,フィン英の両方を合わせた数のようですので,収録語数は決して多くありません。ページ数は400ページほど。著者には Langenscheidt Editorial Staff 編,と書いてあります。ちょっと調査が必要ですが,これまでフィンランド以外の出版社が出していたポケット辞書のような,フィンランドの古い辞書を安い版権で買い取って出版,というものとは異なり,新たに編纂したもののようです。
ちなみに,フィンランド語英語の部には見出し語毎に発音が書いてあるのですが,これは外国人むけです。例えば kiitos 「ありがとう」の発音は [kee-toass] と書いてあります (イタリックは「強め (ストレス)」の位置を表します)。pyörremyrsky 「ハリケーン,台風」に至っては [pewur-raym-mewrs-kew] ... いやはや。日本人は母音と子音の長さの区別ができるので,書いてある通り読むことができますから発音情報は必要ありません。あ~あ,こんなにスペースを使っちゃって
というむきもありましょうが,ここからフィンランド語を書くときのハイフネーションを確認することができるので,記しておくことにします。例えば,pyörremyrsky のような長い単語が行の最後に来てしまった場合,一体どこで単語を切ったらよいのでしょうか?切り方はそれぞれの言語の正書法 (oikeinkirjoitus) によって決まっているのですが,この辞書の発音表記はフィンランド語の音節の切れ目をハイフンで示しており,この切れ目がハイフネーションの位置を同じなのです。pyörremyrsky の場合は pyör-re-myrs-ky のいずれかの位置でハイフネーションすることになります。英語の辞書と比べると,フィンランド語の切り方はちょっと違っているな,ということが分かると思いますが,いかがでしょうか。 (ワープロがフィンランド語のハイフネーション規則を知っていれば,行末の処理を自動的にやってくれるわけです。通常は英語くらいしかできず,フィンランド語は最悪の場合,間違った切り方をされてしまいます。以前紹介した Office Multi-language Pack や Office Proofing Tools はこのような情報を提供する追加パッケージです。)
辞書は,英フィン・フィン英の辞書部分 (合わせて382ページ) に加え,基本的な会話 (5ページ),フィン・英それぞれの略語の紹介 (合わせて7ページ),英語の不規則変化動詞のリスト (フィンランド人用でしょう,4ページ),数詞・時間・単位の説明 (英・フィン合わせて5ページ),といった内容からなっています。
発音について補足:実際に書かれている pyörremyrsky (pyörre 「渦巻き」 + myrsky 「嵐」) の発音表記は [pewurr-raym-mewrs-kew] と r が一個多くかかれており,間違いです。また,pyörre の re の発音のところに raym と m が入っているのは,フィンランド語の -e で終わる単語の語末に出る音を示すものだと思います (この音は alkukahdennus 「(後ろの単語の)語頭子音が2重になる現象」とよばれ,フィンランド語の正書法にいくつかある文字表記されない音の一つです。フィンランド語の文法書ではアポストロフ ' や声門閉鎖音 (= 声門破裂音 [Wikipedia]) の発音記号を模した疑問符 ? を使って表記されます。なお,この辞書では,e で終わる見出し語自体にはこの記述はなく,この例のように他の単語が続く複合語のみ,その後の子音を重複して書いているようです)。
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