「ヴィンランドって,フィンランドと関係あるんですかね」,と仕事でお会いした方に質問されました。幸村誠さんの漫画が好きで,最新作で現在連載中の『ヴィンランド・サガ』に期待している,ということでした。
宇宙のゴミ (スペース・デブリ) の回収を生業とする主人公が木製探査に向かうまでを描いた処女作『プラネテス』 [amazon.co.jp] (週刊「モーニング」に不定期連載) は私もとても好きで,何度も読み返しました。この作品で幸村さんは 現在たまにニュースになる程度でしかない 宇宙ゴミを現実的な問題として取り上げ,壮大な物語に仕立て上げてくれました。次作となる『ヴィンランド・サガ』においても,著者の緻密な表現と物語の構築力は圧倒的です。(戦いやヴァイキングの蛮行を描写した残虐なシーンが含まれるので,万人むけではないかもしれませんのでご了承ください。その意味でも「週刊少年マガジン」から読者層が少し上の「月刊アフタヌーン」に移ってよかったかも。)
残念ながら,ヴィンランド vinland は「フィンランド」とは関係ありません。『ヴィンランド・サガ』は11世紀のヨーロッパを舞台に,アイスランド出身の主人公トルフィンが父の復讐を胸に成長していく物語です。vin はぶどう (英 vine) のことで,当時まだ未知の大陸であったアメリカにあるブドウの実る豊かな地を指します (『ヴィンランド・サガ』の中でもレイフ・エリクソンという旅行家 (初めてアメリカ大陸に渡った実在のヨーロッパ人) がトルフィンにヴィンランドの様子を語る場面があります)。ヴィンランドという地がこれから主人公の運命とどう関わっていくのかはこれから。わくわくします。
フィンランド語でフィンランドを表す Suomi はその語源がはっきりしません。一方外国名であるフィンランド Finland の finn はゲルマン語起源だそうで,英語でいえば find や wonder あたりと関係があり,もともと「定住せず,狩猟や採集で暮らす人」といった意味があると考えられるそうです (ちなみに「フン族」とは関係ありません)。「フィンランド」や「フィン」という名前は,古くは起源98年ごろのタキトゥス『ゲルマニア』で Fenni という未開人が紹介されているほか,ルーン文字の石碑 (rune stone) にも finlont や finlandi という名前で言及されています [ Wikipedia の Finnish people, Finland の語源の項を参照 ]。もっとも,その時点で「フィン人」と呼ばれていたのは現在のサーミ人の先祖であったろう,ということですが。
『ヴィンランド・サガ』の主人公トルフィンが実在している人をモデルにしているかどうか,という話もあるのですが,これには「ヴィンランド」にまつわるヴァイキングの伝説もあり,また後日書こうと思います。
「ヴィンランド」はある意味桃源郷。「ヴィンランド・サガ」を佐賀のキャッチコピーにしてはどうでしょう?「ヴィンランド・佐賀」。... おあとがよろしいようで。
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